『キャラバン』CARAVAN
mainpicture 2000年11月25日よりシネマライズ他、全国順次公開

1999年/フランス・ネパール・イギリス・スイス合作/1時間48分/シネマスコープ/ドルビーデジタル/字幕翻訳:松岡葉子
後援:ネパール大使館、フランス大使館/提供:テレビ東京、朝日新聞社、アーティストハウス、タキコーポレーション、ギャガ・コミュニケーションズ/配給・宣伝:ギャガ・コミュニケーションズGシネマグループ 絵本:「キャラバン」:アーティストハウス刊

◇監督・脚本:エリック・ヴァリ ◇製作:ジャック・ペラン ◇脚本:オリヴィエ・ダザ ◇脚本協力:ジャック・ペラン、ナタリー・アズレ、ジャン・クロード・ギルボー、ルイ・ガイデル ◇撮影:エリック・ギシャール、ジャン・ポール・ミューリス ◇音楽:ブリュノ・クーレ

◇キャスト:ツェリン・ロンドゥップ、カルマ・ワンギャル、ラプカ・ツァムチョエ、グルゴン・キャップ、カルマ・テンジン・ニマ・ラマ



| 解説 | ストーリー | キャスト&スタッフ |
| オフィシャルサイト | 監督来日記者会見 | WERDE OFFICE | CINEMA WERDE |




【解説】


美しくも厳しいヒマラヤの大自然を舞台に、
生死を賭けたキャラバンを繰り返す人々。
フランスそして世界が絶賛した、圧倒的な美しさと
生きる力に満ちた壮大な感動スペクタクル!



超然たるヒマラヤ山脈を越え、ヤクを引き連れ、生きるために塩を運ぶキャラバン隊。チベットに限りなく近い、北ネパールのドルポ地方。数千メートルの嶺を越え、数百年の間に切り開かれたわずかな道をたどって、北から南へ、生死を賭けた旅を繰り返す彼ら。美しくも厳しいヒマラヤの大自然に、挑み、拒まれ、時にそのふところに抱かれるキャラバンの物語は、地球上に存在する全てのものへの畏敬と希望が込められた、壮大な感動スペクタクルである。
フランス、ネパール、イギリス、スイス4カ国合作の本作は、本年度のアカデミー賞の最優秀外国語賞ノミネート他、仏セザール賞では最優秀撮影監督賞、最優秀音楽賞を受賞。フランスでは昨年12月に公開され、250万人以上を動員する大ヒットを記録、今だにロングラン上映を続けている。
オールロケによる撮影は、標高5,000メートルを超えるネパールの高山で行われた。写真家でもある監督エリック・ヴァリは、80年代からこの土地に住み、土地の人々の強力を得て、際立った美しさと生きる力に溢れた、稀有なるドラマを描き出した。

村の人々を率いて、永年の間キャラバンを続けてきた長老。カリスマ的な指導者として絶大なる信頼を集めてきた彼が、彼の地位を引き継ぐはずだった長男を事故によって失ったとき、ドラマは始まる。長老は幼い孫の少年に将来の長老としての期待を寄せることになるが、苛酷なキャラバンの指揮を少年には期待できない。周囲の不安の中、先頭に立ってキャラバンを出発させようとするのは、過去に長老と敵対していた村人の息子であり、長老の死んだ長男の親友でもあった若者だ。あくまでも神託の吉日に従って出発しようとする長老と、そのやり方に反発するかのように大多数の村人たちを率いて旅立つ若者。山に生きる民として、大自然に抱かれた者として、次世代の指導者を巡り二つの世代が対立する。そして厳しいキャラバンの旅の中で、二人の男の葛藤を目の当たりにした少年は、遠い将来に伝説的な長老となる成長の第一歩を踏み出した…。

ヒマラヤの5,000メートルを超える山中での撮影は、土地の人々の生活、習俗の一切を忠実に写し取ることを基本に、苛酷な自然条件を克服する忍耐力と、土地の人々の献身的な協力によってなしとげられた。ジャン・ジャック・アノー監督『セブン・イヤーズ・イン・チベット』(1997)のユニット・ディレクターだった本作の監督エリック・ヴァリは、ネパールに住み土地の人々との深いつながりをつくっていた。自然と人々べのヴァリの敬虔な感情は、本作と、私生活においてのパートナーでもあるデブラ・ケルナーとつくりあげた写真集「ヒマラヤ、ある長老の少年時代“Himalaya-L'enfance D'un Chef”」に、際立った美しさとして残されている。
製作はジャック・ペラン。60年代のフランスを代表する若手俳優として、またコスタ・ガヴラス監督『Z』(1969)、『戒厳令』(1973)、などの製作者として知られ、その後も俳優、製作者としてキャリアを重ねてきた。最近では『リュミエールの子供たち フランス映画100年の夢』(1995)『ミクロコスモス』(1996)など良質な作品を多数製作している。
シンプルでいて豊かな音の響きが印象的な本作の音楽は、『ミクロコスモス』のブリュノ・クーレが担当。ラマ(僧)の朗唱するマントラと女声コーラスを組み合わせた、深く美しい音楽は、観るものの心を癒し、精神を静かに覚醒させる。




 


【ストーリー】


対立した長老と若者たち。そして彼らは、それぞれのキャラバンを出発させる。
遠い将来に伝説的長老となる少年が、ヒマラヤで見たものは…。



黄金の波のように一面の麦畑がひろがっている。老人が孫の少年に語る。
「この畑全部で、村の者が3ヶ月食べるのがせいぜいだ。」 老人は、村の長老ティンレ。永年の間、村人を率いてキャラバンを続けてきたカリスマ的長老だ。長老の孫である幼い少年はツェリン。彼らの村はヒマラヤの奥深い山中ドルポ地方にあり、厳しい冬を生き延びるためには、ヤクの背に塩を載せて運び、食糧である麦と交換するキャラバンを行わなければならなかった。男たちとヤクの隊列がいつものように村に戻ってくる。だが、一頭のヤクの背には男の遺骸があった。ティンレの長男、ラクパ。ツェリンの父だ。一日でも早く村に戻ろうと近道を選んだための事故だった。だが長老ティンレは、旅に動向した若者カルマが、自分が長老になるために仕組んだ罠だと言い張る。カルマはラクパに並ぶ弓の名手であり、ラクパとその妻ペマとは幼なじみでもあった。
ラクパ亡きあと、誰がキャラバンを指揮するのか。有能で若者からの人望も厚いカルマを推す声に、ティンレは激しく抵抗する。孫のツェリンが指導者にふさわしい力を備えるまで、自分が隊列を率いると。しかし、体力の衰えが隠せないティンレに賛同する者は少なかった。

そして、次のキャラバンに出立する吉日が神託によって占われる。白分15日の満月、次の満月の日だ。だがカルマは、嵐が来る、早く出かけるべきだと主張する。そして彼は、シャーマンの神託とティンレの怒りに背を向けて、吉日より前に村の若者達と大多数のヤクを率いて出発してしまう。
ティンレは自分の補佐役として、僧としての修業の日々を送っている次男ノルプをたてようと僧院を訪れていた。父の要請をいったんは断ったノルプだったが、「最も困難な道をゆけ」という師の教えを思い出し、父の村に戻ってきた。


 



年長の男たち、未来の長老として「パサン」の名を与えられたツェリンと、母のペマ、ノルプたちが長老ティンレの指揮の元に旅立つ。
カルマ率いる若者たちのキャラバンの足取りは速く、追いつくのはとても容易ではない。しかしその差を一気につめようと、ティンレは「悪魔の道」と呼ばれる崖の道を通ろうと決める。湖に落ち込むような切り立った崖に、ヤクが向きを変えることもできない細い道が、空へ伸びるように刻まれている難所だ。途中道が崩れ落ち、足場がない場所にさしかかった彼らは、なんとか補強してそのまま渡りきろうとする。そして渡りきれたと思った瞬間、隊列後尾の一頭のヤクが、はるか崖下の湖に転落する。一頭のヤクと塩の荷を犠牲にし、彼らはこの場所をくぐり抜け、ついには高原で野営するカルマたちに追いついた。
老人の剛胆さに驚きを隠せない若者たち。しかし彼らには、さらに過酷な大自然の試練が待ち受けていた。激しい嵐と雪のなかで、人と人、また、人と自然との、生きるための戦いが交錯する。
そしてその時、ヒマラヤは誰に従うのか?



 


【キャスト&スタッフ】


■ツェリン・ロンドゥップ(長老ティンレ)

<監督は語る> ティンレについて

突然の息子の死により、老いた長老ティンレは村の人々を守るため、自分自身の誇りを賭けて再びキャラバンの先頭に立つことになる。ティンレを変えようとする人はいない。 長老演じるロンドゥップはこの映画の中心人物で、彼と彼の人生からこの映画が生まれた。彼はまっすぐで自尊心が強く情熱的な上、様々な知恵とユーモアのセンスに溢れている。ロンドゥップと私は20年前に出会い、長い間この映画の製作を夢見てきた。しかし彼には、映画の撮影とは、規律、忍耐、根気といった事柄を意味することが分かっていなかった(私自身もだが)。
予測できない激しい天候の移り変わりによる予定の変更や、時には意見の対立があったが、ロンドゥップと彼の仲間たちは、ドルポの人々の生き方をこの映画に写し込むという共通の夢を掴み取ることとなった。



■カルマ・ワンギャル(少年パサン)

<監督は語る> パサンについて

長老ティンレの孫。キャラバン出発前に幼少時代の名ツェリンから改名。パサンと呼ばれるようになる。彼が後にキャラバンを率い、ドルポの人々の将来を担う伝説的な長老となる。
パサンを演じるワンギャルの夢は、カトマンズの街に出て彼と共に生きる人々が、近い将来体験することになる大きな変化に対応できるよう勉強すること。この撮影そのものが、彼には大きな学習になったことは間違いないだろう。



■グルゴン・キャップ(若者カルマ)

<監督は語る> カルマについて

彼は長老ティンレがかつて対立した村人の息子だ。ティンレは長男ラクパの死の責任はカルマにあると糾弾する。カルマは弓の腕前では誰にも引けを取らない。若者たちは彼に従って、キャラバンを出発させる。
カルマを演じるキャップはチベット東部のアムド地方出身。彼自身、ヤクを飼う生活をしていたが、中国の圧力から逃れインドに暮らしていた。サムライを思わせる風貌の彼は、並外れた聡明さと集中力の持ち主である。



■カルマ・テンジン・ニマ・ラマ(僧ノルプ)

<監督は語る> ノルプについて

長老ティンレの次男。8歳の時から僧院で暮らし、修業と壁絵を描くことに没頭してきた。父の要望をいったんは退けるが、師の教えに従って「最も困難な道」を選び、キャラバンに同行する。キャラバンという旅で彼が目撃したことのすべては、彼の絵として描かれ、後に伝説的な長老となるパサンの少年時代の物語として、語り継がれることになる。
ノルプを演じるニマも、本物のラマ(僧)であり、ドルポの僧院に住んでいる。撮影の間、彼はかつて自分が一夜の宿とした洞窟や、喜捨の食糧を求めて訪ねた村を示してくれた。



■ラプカ・ツァムチョエ(母ペマ)

<監督は語る> ペマについて

ペマは長老ティンレの長男の妻であり、パサンの母親でもある。彼女は、夫の死後苦痛を乗り越え、変わらない勇気を持って人生に挑まなければならない。
ペマ演じるツァムチョエは、山での生活を経験したことのない、南インド生まれの女優。彼女はチベットとその伝統への情熱、ヤクを飼っていたこともある商人だった両親の影響もあり、山の人々の生活に全身で飛び込んできてくれた。出演者の中で唯一、映画への出演を経験している彼女は、ジャン・ジャック・アノー監督、ブラッド・ピット主演の『セブン・イヤーズ・イン・チベット』(1997)で、服を仕立て主人公と親しくなる娘を演じている。



■エリック・ヴァリ(監督・脚本)

監督エリック・ヴァリは写真家でもあり、そして作家でもある。本作のロケ地でもあるネパール、ドルポ地方へ旅にでたのがきっかけで、1983年からネパールに在住。『キャラバン』を監督する前は、ネパールに関する書籍を執筆してきた。1992年、ネパール国内での執筆活動に対し、ネパール国王から貢献賞授与。近作では、ジャン・ジャック・アノー監督の『セブン・イヤーズ・イン・チベット』(19970にヒマラヤでのユニット・ディレクターとして参加している。
また、今回の撮影は、彼の共同パートナーであり写真家でもあるデブラ・ケルナーと作り上げた写真集「ヒマラヤ、ある長老の少年時代“Himaraya-L'enfance D'un Chef”」に、際立った美しさとして記録されている。


<フィルモグラフィー>

■映画
『The Honey Hunters of Nepal』(1988・日本未公開)
共同プロデューサーとして参加。1989年国際ドキュメンタリー協会賞受賞作品
『Shadow Hunters』(1990・日本未公開)
共同製作プロデューサーとして参加。1991年エミー賞ノミネート作品
1991年アカデミー賞最優秀短編ドキュメンタリー賞ノミネート作品
『セブン・イヤーズ・イン・チベット』(1997)
ユニット・ディレクターとして参加。


■おもな執筆本
「Tziba,My Village In Nepal」(ラルース社刊)
「Mountain World」(ナショナル・ジオグラフィック・ソサエティ刊・1989年)


■現在も続けている執筆活動
National Geograpic Magazine
National Geograpic's GEO Magazine for Kids
The Sunday Times Magazine
The Smithonian Magazine
Life Magazine



■ジャック・ペラン(製作・脚本協力)

ペランは俳優として1960年にデビュー。『鞄を持った女』(1960)で感受性豊かな若手俳優として注目される。1989年の『ニュー・シネマ・パラダイス』では主人公の少年が成長した後で、映画監督となった役柄を演じている。俳優としてのキャリアを継続しながら、1969年に製作プロデューサー業に進出。『Z』(1969)、『戒厳令』(1973)、『ブラック・アンド・ホワイト・イン・カラー』(1976)で同年アカデミー賞外国語映画賞を受賞。近作では『リュミエールの子供たち フランス映画100年の夢』(1995)、虫の生態を描いた話題作『ミクロコスモス』(1996)など製作作品多数。


■オリヴィエ・ダザ(脚本)

『La Cavale des fous』(1993)『Les Faussaires』(1996)『世界でいちばん好きな人』(1995)他。


■ブリュノ・クーレ(音楽)

虫たちのファンタジックな世界を描いた話題作『ミクロコスモス』(1996)の音楽を担当する他、1986年から現在までの間に48本の映画、TVの音楽を作曲してきた。


■エリック・ギシャール(撮影)

『ガッジョ・ディーロ』(1997)他。


■ジャン・ポール・ミューリス(撮影)

『ヨーロッパ』(1991)他。