『独立少年合唱団』/BOY'S CHOIR
10月28日よりシネマメディアージュにて公開

2000年/日本/2時間9分/ヨーロピアンビスタ/カラー/35mm/製作:WOWOW+バンダイビジュアル/制作協力・配給:サンセントシネマワークス

◇監督:緒方明 ◇プロデューサー:仙頭武則 ◇原作・脚本:吉本研次 ◇音楽:池辺晋一郎 ◇撮影:猪本雅三 ◇照明:赤津淳一 ◇録音:細井正次 ◇美術:花谷秀文 ◇編集:掛須秀一(J.S.E.) ◇合唱指導:清水敬一

◇キャスト:伊藤淳史、藤間宇宙、香川照之、滝沢涼子、國村準、泉谷しげる、岡本喜八、光石研

この作品のVHS、単行本、サントラはこちら




| 解説 | ストーリー | キャスト&スタッフ |
| オフィシャルサイト | 凱旋記者会見 | WERDE OFFICE | CINEMA WERDE |




【解説】

「あれ、なんだっけ?」 幼くして母親を亡くした少年「道夫」の父親が死の直前に口にした言葉で始まる『独立少年合唱団』は、1970年代初頭の緑豊かな北の町にある全寮制中学を舞台に合唱に情熱を燃やす少年二人の友情を思春期独特のナイーブで情緒的な調べにのせて、心揺さぶる歌声とともに描いた美しい物語だ。

本作は、『眠る男』(1996・小栗康平監督)や『月とキャベツ』(1996年・篠原哲雄監督)の舞台にもなった群馬県中之条町の伊参スタジオを中心に合宿生活をしながら、1999年3月から11月まで四季を追い4期間に分けて撮影された。タイトルのとおり「合唱」が命とも言える映画であるが、『独立学院グリークラブ』は撮影期間の合間にも東京で訓練を重ね、同クラブの顧問教師で合唱指揮者役の香川照之も自宅で日夜ピアノの練習に励みリアリティを追求。そうした8ヶ月の間に少年たちは、物語同様、様々な人々との出会いや経験により成長し、それが『独立少年合唱団』の一番の魅力となった。
主演の少年二人を、かつて「とんねるずのみなさんのおかげです」(CX)の“チビノリダー”としてお茶の間の人気をさらった“野性派”伊藤淳史と、少女のような美貌と天使のような歌声の“繊細派”藤間宇宙(とうま そら)が、そして少年達に合唱の魅力を教える教師を、今年ベルリンだけでなくカンヌも沸かせた香川照之が静かに熱く演じている。脇を固める俳優陣も、体当たりで悲劇的な最後を遂げる全共闘の女闘士を熱演した滝沢涼子、香川同様ベルリン・カンヌの観客を唸らせた光石研、飄々とした魅力で国語教師を好演した泉谷しげる、老学院長に大御所岡本喜八と、実力派、異色派が顔をそろえ彩りを添えている。

監督は「40歳の新人監督」緒方明。1981年の「ぴあフィルムフェスティバル」で注目を集めた後、同じく本作で映画デビューを果たした脚本の青木研次とともに「驚きももの木20世紀」(ABC)を手掛けるなど、TVドキュメンタリーを主な活動の場としていた。監督、脚本の二人が劇場用長篇映画デビューとなる作品でのアルフレート・バウアー賞受賞は日本映画史上初。プロデューサーは仙頭武則。仙頭と彼が率いるサンセントシネマワークスにとって、2000年、本作のベルリン映画祭コンペティション部門招待・受賞は、5月のカンヌ映画祭にて、J-WORKS第1回作品『EUREKA(ユリイカ)』(青山真治監督・役所広司主演)がコンペティション部門に招待され「国際批評家連盟賞」「エキュメニック賞」を受賞したことで、残るヴェネチア映画祭へ向けて、「単年度世界3大映画祭コンペティション部門制覇」という世界初の快挙への重要なスタートとなった。撮影の猪本雅三は劇場デビュー作『M/OTHER』(1999年・諏訪敦彦監督)のカンヌ映画祭国際批評家連盟賞受賞に続く快挙。『M/OTHER』『独立少年合唱団』に続くJ-MOVIE-WORKS5『人間の屑』(中嶋竹彦監督)の撮影も担当しており、ヴェネチア映画祭への期待も高まる。 音楽は、、オペラ楽曲による国際エミー賞優秀賞や、ザルツブルグ・テレビ・オペラ祭優秀賞受賞などで国際的に知られる池辺晋一郎が担当。映画全篇を通して流れる弦楽合奏の切なく美しい調べも大きな魅力である。

また、本作は、映画祭期間中に行われたヨーロピアンフィルムマーケットでドイツのセールスエージェント会社メディア・ルナと契約を完了しており、EUをはじめとする世界各国での劇場公開の準備が既に整っている。




 


【ストーリー】

◆僕の声になって…

「大昔、人はしゃべる前に歌うことを覚えた」

1970年代のとある北の町。写真館の息子道夫(伊藤淳史)は、父親を亡くし山の中の全寮制中学校「独立学院」に転校することになった。吃音症の道夫は転校初日から試練を迎える。田舎の学院に娯楽は少ない。寄宿舎で集団生活をする同級生たちは“わが意を得たり”とばかりに少年特有の残酷さを発揮して道夫をいじめた。「ど・どもり」という同級生たちの声の嵐が寄宿舎を包む。毛布で頭を覆ってみても消えることのない悪魔の合唱。そこから道夫を救ってくれたのは、この日の朝、偶然音楽室で出会った美しい面立ちをした康夫(藤間宇宙)という少年の天使のようなソプラノだった。 康夫の説得によって学院からの脱走を思いとどまった道夫だったが、相変わらず同級生たちに馴染めない。悩む道夫になにかと世話を焼く康夫。やがて、二人の間には“友情のようなもの”が芽生えていく。そんなある日、康夫は自分が所属する合唱団の指導者で学院の牧師である清野(香川照之)に道夫を引き合わせた。歌っているときは「どもっていない」ことを、清野から告げられた道夫は驚いて横にいる康夫の顔を見た。ニコニコと微笑している康夫。道夫は合唱団に入団することを決めた。合唱団での毎日が道夫を変えて行く。いつしか学院の廊下で同級生とすれ違っても「オッス!」と自然に声が出るようになっていた。歌うことで自分に自信を与えてくれた康夫との“友情のようなもの”はますます親密になっていく。


「僕の声なら大丈夫って言ってくれたんだ!」

二人きりの夜の音楽室で康夫は自慢げに道夫に話す。小学生のときに会ったというウィーン少年合唱団の少年から自分のソプラノは太鼓判を押されたというのだ。彼は自分の夢が「ウィーン少年合唱団に入団すること」だと道夫に告げた。 しかし、康夫には思春期の宿命が迫っていた。“声変わり”だ。合唱団員にはどうにか悟られずに過ごしてきたが、夏休み恒例である近在の女子中学校との合同練習時にある少女から「ボーイソプラノは声変わり前が一番美しい」と告げられ愕然とする。

不安な気持ちをぶつけたいが、道夫は別の女子部員と話し込んでいる。それが気に入らない康夫は道夫に石を投げつけて、異性との交歓にはしゃぐ同級生たちの群れを一人離れた。 長かった夏休みが終わり、みんなが戻った学院からは康夫の姿が消えていた。寄宿舎のベッドに人間の頭くらいの石を残して。気味悪がる同級生たちを横目に、道夫は肌身離さずその石を持ち歩いた。数日が過ぎ、ある晴れた日の授業中、康夫はひょっこりと帰ってきた。


「久しぶりっ!」

はじけるような笑顔で康夫に話しかける道夫だったが、康夫から返ってきたのは「声がでなくなった」と書かれたメモ書きだった…。



 


【キャスト&スタッフ】

■香川照之(清野省三)

1965年東京都生まれ。NHK大河ドラマ「春日局」(1989)でデビュー後、数多くのテレビドラマ、映画等に出演。主な出演作に、『RAMPO』(1994)、『蛇の道』(1998)、『犬、走る。』(1998)、『Beautiful Sunday』(1998)などがあり、2000年カンヌ国際映画祭での、姜文監督『鬼子来了』(中国映画)はコンペティション部門に出品され、ベルリンに続き今回はシルバーメダルにあたるグランプリを受賞。


■伊藤淳史(柳田道夫)

1983年千葉県生まれ。小学生の頃からテレビドラマ・舞台等でキャリアを重ねる。「とんねるずのみなさんのおかげです」(1988〜90・CX)の人気コーナー「仮面ノリダー」で“チビノリダー”を演じ国民的人気者に。1997年の『鉄塔武蔵野線』で映画初主演。他の映画出演作に『学校 III』(1998)がある。


■藤間宇宙=とうま そら(伊藤康夫)

1984年東京都生まれ。テレビドラマ、舞台、CMなどに出演。本作品で映画デビューにして主演を務める。これまでの出演作に、NHKドラマ「双子探偵」(1999)、舞台「夏の庭」(1997)、ミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」(1998)、NHKドラマ「エイジ」(2000)などがある。


■滝沢涼子(相沢里美)

1969年神奈川県生まれ。大林宣彦監督『青春デンデケデケデケ』(1992)で映画デビュー。以後、映画、テレビを中心に活躍。『RIKO』『RIKO II』(1998)での主演をはじめ、主な出演作には『エンジェルダスト』(1993)『弾丸ランナー』(1996)、『ポストマンブルース』(1997)などがある。


■光石研(柳田寛)

1961年東京都生まれ。『博多っ子純情』(1978)で主演デビュー後、様々な作品で名バイプレイヤーぶりを発揮。どんな役柄も自由に演じ、日本映画にはなくてはならぬ存在として活躍している。主な出演作には『Love Letter』(1995)、『スワロウテイル』(1996)、『Helpless』(1996)などがあり、近年では『シン・レッドライン』(1999)『五条霊戦記』(2000)、2000年カンヌ国際映画祭国際批評家連盟賞・エキュメニック賞受賞作品『EUREKA(ユリイカ)』(2000)などがある。


■泉谷しげる(木場教諭)

1948年青森県生まれ。『ええじゃないか』(1980)で映画デビューを飾り、続く『狂い咲きサンダーロード』(1980)で美術・音楽を担当しブルーリボン美術デザイン賞を受賞するなど数々の映画作品に出演。最近では『ケイゾク』(2000)などで役者として活躍する一方、北海道・奥尻島救済キャンペーン「一人でフォーク・ゲリラ」(1993)や“EARTH AIDS FESTIVAL”(2000)に参加などボランティア活動も積極的に行っている。


■岡本喜八(植草学院長)

1924年鳥取県生まれ。東宝に入社後、NHK最優秀新人監督賞受賞作『結婚のすべて』(1958)で映画監督デビュー。以後“暗黒街”シリーズ、“独立愚連隊”シリーズなどを生む。これまでの監督映画は、『独立愚連隊』(1959)、『日本のいちばん長い日』(1967)、『肉弾』(1968)、日本アカデミー賞最優秀監督賞受賞作『大誘拐』(1991)、『イースト・ミーツ・ウェスト』(1995)など合計38本を数える大ベテランである。


■仙頭武則(プロデューサー)

1961年横浜市生まれ。カンヌ3作連続受賞をはじめ、ベルリン等の国際映画祭で14ヶ国46賞を受賞。世界市場を開拓し続ける、日本を代表する国際的プロデューサー。1992年より7年間ですでに31人の監督と38作品をてがけ、『リング/らせん』(1998)のヒット作のプロデュースも。日本映画の輸出産業化を目指し、積極的な海外展開を図るサンセントシネマワークス(株)の代表取締役でもある。今後浅野忠信・永瀬正敏初共演で話題の『五条霊戦記/GOJOE』(10/7東宝邦画系)の他、カンヌ国際映画祭で2冠を制した『EUREKA(ユリイカ)』等の話題作が公開予定。


■緒方明(監督)

1959年佐賀県生まれ。『狂い咲きサンダーロード』(1980)『シャッフル』(1981)『爆裂都市』(1982)などの石井聰亙監督作品の助監督を務める傍ら、自主制作映画『東京白菜関K者』を監督。この作品は1981年のぴあフィルムフェスティバルにて大島渚や長谷川和彦の支持を受け入選し注目された。その後、CMや企業PRに活動フィールドを移し、ドキュメンタリーを中心にドラマ・ミュージックビデオなど幅広くディレクターとして活躍する。スクリーン・デビュー作『独立少年合唱団』は、第50回のベルリン国際映画祭コンペティション部門に正式招待され、新人監督賞にあたる「アルフレート・バウアー賞」受賞の快挙となった。これからが期待される「40歳の新人」である。


■池辺晋一郎(音楽)

1943年茨城県生まれ。東京芸術大学大学院修了後、オーケストラを始め室内楽、合唱、オペラから映画、演劇の音楽まで幅広く作曲活動を続け、国際エミー賞優秀賞や、ザルツブルグ・テレビ・オペラ祭優秀賞受賞などで国際的に知られる。近年手掛けた映画音楽には、黒沢明監督『夢』(1990)、篠田正浩監督『瀬戸内ムーンライトセレナーデ』(1997)、今村昌平監督『うなぎ』(1997)などがある。


■青木研次(原作・脚本)

1958年山形県生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業後、在日米軍施設をはじめいくつかの職業を経て、テレビ番組の放送作家となる。1993年より緒方明監督と共に、ノンフィクション・ドラマのテレビシリーズを手がける。本作品は、劇場用長編映画脚本第一作。


■猪本雅三(撮影)

1959年大阪府生まれ。映画学校卒業後、『ウルトラマン'80』の撮影助手を経て、1982年にっかつ撮影所と契約。1988年からはフリーとして活躍。1999年、初の長編劇映画『M/OTHER』(諏訪敦彦監督)は、カンヌ映画祭で国際批評家連盟賞を受賞。また同作品で『該当者なし』が通例となっていた第43回日本映画撮影監督協会新人賞(通商三浦賞)を受賞。本作の他、『火垂(ほたる)』(河瀬直美監督)、『人間の屑』(中島竹彦監督)の撮影も担当するなど仙頭武則プロデュース作には欠かせない存在となっている。


■細井正次(録音)

『セーラー服と機関銃』(1981)『リング』(1998)『らせん』(1998)


■花谷秀文(美術)

『TALKINGHEAD』(1992)『ベイビークリシュナ』(1998)『白痴』(1999)


■掛須秀一(編集)

『攻殻機動隊』(1996)『女優霊』(1996)『萌の朱雀』(1997)


■清水 敬一(合唱指導)

日本合唱指揮者協会理事