『風を見た少年』
2000年7月22日よりにて公開

2000年/日本/1時間37分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル/デジタルDTS/製作:日立マクセル/プルミエ・インターナショナル/企画:クリエイターズ・エージェンシー

配給:ブエナ ビスタ インターナショナル (C)日立マクセル

◇製作総指揮:佐藤東里 ◇製作:増田久雄 ◇総監督:大森一樹 ◇アニメーション監督:篠原俊哉 ◇原作:C・W・二コル「風を見た少年」(講談社文庫刊) ◇脚本:成島出 ◇音楽:寺嶋民哉 ◇主題歌:REBECCA「神様と仲なおり」(イーストウエスト・ジャパン) ◇プロデューサー:糠谷豊、小沢十光、空閑由美子 ◇アソシエイト・プロデューサー:臼井正明、安崎康博 ◇キャラクターデザイン:前田実 ◇美術:荒井和浩 ◇撮影監督:長谷川肇 ◇録音監督:瀬川徹夫

◇キャスト(声):安達祐実(アモン)、前田亜季(マリア)、戸田恵子(ルチア)、原田大二郎(タバル)、つのだ☆ひろ(レーニック)、あおい輝彦(フリッツ博士)、原日出子(マーゴ)、石田太郎(金鷲)、山谷初男(ウルス)、有川博(サリシュミ)、夏木マリ(モニカ)、内藤剛志(ブラニック)



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【解説】

日本映画史上空前のスケールで贈る、ファンタジー・アドベンチャー
この夏、あなたは永遠に心に残る〈奇跡〉を目撃する…。


かつて、自由に空を飛ぶ〈風の民〉がいた。かつて、自由をめぐって闘いがあった…。

日本映画史上空前のスケールで贈る、感動のファンタジー・アドベンチャー『風を見た少年』。これは真摯な視線で大自然を見つめ続けてきた作家C・W・ニコルの同名小説を、日本映画界を代表する才気溢れるスタッフの手により、日本が世界に誇るアニメーションという表現形態によって映像化した画期的な映像プロジェクトである。




主人公は、不思議な力を持つ〈風の民〉の末裔、アモン。闘うことを知らない無垢な少年は、独裁者ブラニックの野望を打ち砕くため、両親の死を乗り越え、封印されたその〈力〉を解き放つ。自然を慈しみ、両親の愛に守られてきた少年が、自らの手で愛する者を守ろうとした時、運命の扉は開かれ、未知なる冒険は始まる。かなうはずのない強大な的に立ち向かうアモンのひたむきな願いは、果たして〈奇跡〉を呼ぶことができるのだろうか…。かけがえのない自然を愛する人々と、それを踏みにじる破壊者との闘いの中で、人として大切な事をひとつひとつ学び成長していくアモン。アモンを助け、共に闘う〈海の民〉の少女マリア。そして、心の弱さゆえに支配欲に燃える独裁者ブラニック…。多彩な登場人物によって綴られたスケール感溢れる愛と闘いのドラマは、見る者すべての心に永遠に残る〈勇気〉と〈感動〉を与えてくれるだろう。

空、海、そして、緑の大地…。自然の美しさを余すところなく描き出す珠玉の映像の中でも、最も魅力的なシーンのひとつはアモンの〈飛翔〉のシーンである。「空を飛びたい」という人間の夢と憧れを乗せて、風に身をまかせ、空を高らかに舞うアモンの姿は、観客をさわやかな解放感と映画的な喜びで包み込むことだろう。




総監督は『ゴジラ』シリーズをはじめ数々のエンターテインメント作品で知られる大森一樹。実写映画で数々の名作を生み出してきた大森監督にとってもアニメーションは初の挑戦であり、熱い注目を集めている。製作は日本映画唯一のエージェンシー〈クリエイターズ・エージェンシー〉の発起人で、『高校教師』『ラヂオの時間』プロデューサーの増田久雄。また、アニメーション監督に『ルパン三世/炎の記憶』の篠原俊哉、脚本に『恋極道』の成島出、作画監督に『Dr.スランプ』の前田実を配すなど、“アニメーションと実写”の枠を超えたメインスタッフ構成もエージェンシーのパッケージ力によるものである。

登場キャラクターたちに生命を吹き込む声優陣には、主役のアモン役には安達祐実、独裁者ブラニックには内藤剛志、ヒロインのマリア役に前田亜季。この他、戸田恵子、あおい輝彦、原日出子、夏木マリなど、これまでのボイス・キャストの常識を覆す、実写映画クラスの実力派俳優たちが結集。

音楽は、『学校の怪談2』などの映画やテレビ、舞台で活躍する寺嶋民哉が担当。プラハでチェコフィルによって録音された壮大なメロディが物語を盛り上げる。

さらに、主題歌は「RASPBERRY DREAM」「フレンズ」などのヒットで、伝説を築き上げたロックバンドREBECCAが担当。「神様と仲なおり」で10年振りの復活を果たし、ミュージックシーンにもセンセーショナルな話題を巻き起こしている。

原作者のC・W・二コルは語る。「人生には、見えるはずのないものが見える瞬間がある。そのとき、奇跡は生まれるのだ」と…。時が流れ、かつて空を飛んだという記憶を失っても、〈風の民〉は心の中に、今でも翼を持っている。目には見えない真実、言葉にはならない純粋な思いを心から信じることができた時、〈奇跡〉は起こり、〈風の民〉の伝説は蘇る。―そして、〈風の民〉の末裔である私たちもまた、未来に向かって目には見えない真実の翼をはばたかせるのだ。



 




【プロダクションノート】

◆チェコフィルハーモニー室内管弦楽団による壮大な音楽に感動

感動の物語を盛り上げるため製作スタッフがこだわり、力を入れたのが音楽。その意向をもとに、『緊急呼出し/エマージェンシー・コール』『学校の怪談2』等で、かねてから映画音楽には定評のあった寺嶋民哉を起用し、99人編成のチェコフィルハーモニー室内管弦楽団演奏による音楽をチェコの首都プラハの「芸術家の家/ドヴォルザーク・ホール」で録音した。モルダウ河畔での3日間に渡る収録は日本人スタッフと楽団の熱気溢れるものとなり、指揮者のマリオ・クレメンスをして、「今回の演奏は私の指揮者活動の中でも、心に残る仕事となった」と言わしめた。

クレメンスの言が心底からの声である証拠に、収録を終えた楽団員たちが、「今回素晴らしい演奏の機会を与えてくれた日本の皆様に」と、国民的作曲家スメタナの「我が祖国より モルダウ」を演奏してくれるというハプニングとなった。この思いもよらぬプレゼントに、日本のスタッフは大感激。そのプラハでの熱き情熱の結集は、日本映画としては稀有な、壮大な映画音楽として表れている。



◆この映画で、REBECCA 10年ぶりの復活!

映画音楽とは別にテーマソングを誰に依頼するかも製作陣にとって大きな課題だった。増田プロデューサーはこの映画の大きなテーマと、あの伝説のバンドREBECCAを結びつけることはできないかと、かつてのリーダー土橋安騎夫とボーカルのNOKKOにアプローチした。ピュアでスケール感のある内容に2人とも感動。特にNOKKOは作詞をする上で、パイロットフィルムを見、シナリオを読むだけでは満足せずに、原作を読むことで少しでもC・W・二コルの心を理解しようとした。ところがすでに絶版になっていた原作本は出版社にも在庫がなく、自ら古本屋を歩き回り、原作を見つけ出しその日のうちに読み終えた。

「完成した映画を見て音楽、映画とジャンルは違っても、映画製作者の人たちと私が、この原作の中からピックアップしたものが一致していたということに感動しました。『風を見た少年』で10年ぶりにREBECCAを再結成できたことはとても嬉しい」と言っている。 エンディングに流れる「神様と仲なおり」のNOKKOの歌声は主人公アモンのメッセージを、そして原作者C・W・二コルのメッセージを代弁しているようだ。



◆一本の実写映画がとれる!? 豪華ボイスキャスト

『風を見た少年』の大きな特色のひとつに、その豪華なボイス・キャストがある。従来のアニメーション映画の配役はその一部を除いて大半は、いわゆる「声優」と呼ばれる俳優たちによって行われていた。映画、TVで活躍する俳優を起用することがあったとしても、それは中心となる2、3のキャストに限られていた。ところが本作品のボイス・キャストでは、主役アモンの安達祐実、主要な登場人物のマリア(前田亜季)、ルチア(戸田恵子)、ブラニック(内藤剛志)のみならず、夏木マリ、あおい輝彦、原日出子、原田大二郎、つのだ☆ひろ、石田太郎、山谷初男、有川博という脇役の隅々に至る豪華なキャスティングが実現した。記者会見の会場でも、勢揃いした俳優陣を前にして「このキャストで劇映画が一本製作できるじゃないですか」との記者の声に、総監督はじめスタッフからも「そう言われれば…」と納得。

4月1日から5日までの5日間のアフレコ(台詞録音)も、陽気な大森総監督の下のアットホームな雰囲気に、声優初体験という内藤剛志、前田亜季、夏木マリ、原日出子、つのだ☆ひろもすっかりリラックス。短期間の中で急速にチームワークが出来上がった。

「映画記者たちも言っていたけれど、このメンバーで劇映画やりましょうよ」という俳優たちの声に、大森総監督、製作スタッフ陣も満更でもない様子、ひょっとして、同キャストの劇映画が近い内に実現するかも?



◆日本映画界の新たなる挑戦/クリエイターズ・エージェンシー

1999年2月、監督、脚本家をはじめとする映像クリエイターにより良い創作条件・環境を提供するべきシステムを目指し、クリエイターズ・エージェンシー(以下CA)が発足した。発起人は映画『ラヂオの時間』などを手がけ、本作品のプロデューサーでもある増田久雄。こうしたエージェント・システムは米国では既に定着しており、一時低迷したハリウッド復興の原動力にもなっている。

従来の日本映画界では、個人と大組織である製作会社とでは力関係に著しい差があり、〈雇われる側〉の映像作家たちは独自の企画を実現する機会を閉ざされがちである。また才能を持ちながらも営業、宣伝が苦手なクリエイターもいる。

そうした現状を打破するため、CAは合理的かつ効率的に企画のプレゼンテーション及び条件交渉を代行することにより、優れた映像作家たちの才能を充分に発揮できる環境作りを目標としている。

大森一樹、金子修介、野沢尚ら第一線で活躍する映像作家たち30人が参加し発足したCAは、その後、映画プロデューサー、映画監督、脚本家などの映画関係者にとどまらず、小説家、漫画原作者、アニメーターたちも参加するようになった。企画も人材も揃った総合企画ステーションの役割を果たすことを目的としたCAに、映画界も熱い関心を寄せている。『風を見た少年』は、その記念すべき第一回企画作品である。



 




【ストーリー】

<Chapter.1>不思議な少年

新黄金龍帝国の独裁者・ブラニックに制圧された、ハンベルの町―天才物理学者フリッツ博士の息子アモンには、不思議な力が備わっていた。ある日、瀕死の生きものを見つけた彼は、両手から黄金色の光を作りだし、その光で傷を癒してしまったのである。アモンの〈光遊び〉から未知のエネルギーを開発するため、フリッツ博士は助手のルチアと共に実験を繰り返した。ついに実験が成功した時、独裁者ブラニックの魔の手がアモンに伸びる。ブラニックの狙いは、新エネルギーから脅威的な最終兵器・微粒子爆弾を製造することにあった。悪魔の企てに加担することを拒否し、全ての研究データを家もろとも焼き払ったフリッツは、アモンと妻のマーゴを連れて逃亡する。だが、ブラニックの追跡によってフリッツとマーゴは命を落とし、アモンは囚われてしまう。




<Chapter.2>〈風の民〉と〈黄金龍の民〉

空飛ぶ戦艦で目覚めたアモンは、フリッツの助手のルチアが実はブラニックの支配下にあり、微粒子爆弾の完成を命じられていることを知る。その時外を見ると、黄金色に輝く鷲がアモンを誘う。「ごらん、古(いにしえ)の〈風の民〉が見た、黄金色の風を。お前は飛べる。さあ、両手を広げて」…見えない力に導かれ空中に身を乗り出すと、アモンは風に抱かれるように〈心臓の島〉と呼ばれる地に舞い降りる。そこには、島の主でウルスという名の年老いた巨大な熊がいた。ウルスは空からきたアモンに、〈風の民〉の話を語って聞かせる。――かつて、自然と共に生き、空を飛ぶことができる〈風の民〉がいた。自由な魂を持つ彼らは、物欲や所有欲とは無縁だったが、ある日、木の実を一人占めしようとする者が現れると、みんなが彼の真似をした。いつしか、飛ぶこともできないほど、ポケットは木の実でいっぱいに…。飛ぶのをやめた人々は、武器を手に食料の奪い合いを始め、彼らの中から〈黄金龍の民〉が誕生する。武器を持たない〈風の民〉は彼らに殺されていった。だが、力で栄えた者の運命で、〈黄金龍の民〉もまた、より強大な武器を持つ民に滅ぼされてしまった…。

アモンこそ〈風の民〉の末裔。そして黄金龍帝国の復活を成し遂げたブラニックは〈黄金龍の民〉の末裔だったのだ。内なる力につき動かされて、アモンは丘を駆け下り、崖から夕陽に向かってジャンプする。だが、アモンは知らなかったのだ。〈風の民〉は太陽が沈むと空を飛べないということを…。



<Chapter.3>〈海の民〉の少女マリア

川へと落下し、下流まで流されたアモンを助けてくれたのは、隣国・ナバーンのはずれのイルカ岬で母親のモニカと2人で暮らす〈海の民〉の少女マリアだった。大らかで思いやり溢れる母娘と一緒に暮らし始めたアモンは、村の男たちにまじって村の貴重な食料である巨大な魚・ザビ漁にでかける。最初はまったくの役立たずだったが、少しずつたくましくなり、村の生活にもなじんだ頃、―ブラニックの軍隊が突然、ナバーンに侵攻を開始した!村を守るため、封印された武器を手にとる〈海の民〉たち。モニカもまた、マリアを守るために銃を手に戦う。だが、彼らは完全武装の軍隊の前にはあまりにも無力だった。敵の銃弾が、モニカの体を貫く。最期の瞬間までマリアをかばい、彼女は力尽きた。その瞬間、アモンの哀しみは激しい怒りに変わり、身体中から驚異的なエネルギーを放出する。渦を巻く強風が敵の兵士を、戦車を、そして戦艦までを吹き飛ばし、軍隊を一瞬にして破滅させてしまったのだ。

ブラニックとルチアは上空からアモンの姿を確認、攻撃を中止し、生きたままアモンを捕らえるよう軍隊に命令を下す。微粒子爆弾の完成には〈光遊び〉が放出するエネルギーが不可欠だったのだ。





<Chapter.4>戦いの時

アモンはマリアと共に険しい山脈を越え、〈癒しの森〉に逃れ、そこで武器を持った男たちに遭遇する。彼は、新黄金龍帝国に捕らえられた家族を取り戻すため、レジスタンス運動に身を投じた反政府ゲリラたちだった。リーダーのタバルの作戦は、ブラニックの牙城であるハンベルの軍事管理局に夜襲をかけ、町の人々と力を合わせて一斉蜂起するというものだった。

父と母、そしてモニカを殺し、〈海の民〉を全滅させたブラニックは、さらなる野望のために自分を狙うに違いない。そして、微粒子爆弾を完成させた時、〈風の民〉を滅ぼした〈黄金龍の民〉はついに全世界を征服するのだ―。戦うことを知らなかった無垢な少年は、自らの力を解き放ち、ブラニックに立ち向かう決意をする。自然を慈しむ〈風の民〉の末裔として。そして、マリアを守ることができる唯一の存在として。そのひたむきな思いに、いま、〈奇跡〉は起ころうとしていた―。



 




【キャスト&スタッフ】

■アモン(安達祐実)

〈風の民〉の血をひく純真無垢な少年。 〈光遊び〉が出来る不思議な〈力〉を持つことから独裁者ブラニックに狙われる。事故で両親を失うが、金ワシの導きで空を自由に飛び、やがて封印されていた〈力〉を解き放つ。


■マリア(前田亜季)

イルカ岬に住む〈海の民〉の少女。 ブラニックの襲撃を受け、愛する母や仲間を失ってからはアモンと共に行動する、気丈で活発な少女。


■ブラニック(内藤剛志)

アモンの〈力〉を利用した究極の兵器・微粒子爆弾を作ることで総ての国を制圧し、かつて隆盛を誇った黄金龍帝国の復活を目論む独裁者。新黄金龍帝国建国を宣言し大統領に修まる。


■ルチア(戸田恵子)

フリッツ博士の有能な助手だったが、ブラニックの寵愛を受けて密かに研究データを持ち出し、博士の死後は帝国の科学大臣として微粒子爆弾の開発に取り組む。


■モニカ(夏木マリ)

マリアの母親。 ザビ漁で夫と息子を失ってからは女手ひとつでマリアを育てる、 男まさりの女。


■フリッツ博士(あおい輝彦)

アモンの父親。天才物理学者。 アモンの不思議な〈力〉を使って新たなエネルギー開発に取り組む。しかし、ブラニックの野望を知り全てを焼き払い亡命しようとするが追撃を受け命を落とす。


■マーゴ(原日出子)

アモンの母親。 研究に没頭する夫と不思議な能力を持ってしまった息子アモンをやさしく包み込む。亡命の途中、フリッツとともに命を落とす。


■タバル(原田大二郎)

レジスタンスの隊長。 独裁者ブラニックの野望を打ち砕き、平和を取り戻すために戦う男たちのリーダーで、仲間たちの信望が厚い。


■レーニック(つのだ☆ひろ)

レジスタンスの副隊長。 ブラニックによって投獄された妻と子供を取り返し、平和な町を取り戻すために戦いに加わる。陽気な性格でよく歌を口ずさむ。


■サリシュミ(有川博)

レジスタンスを支援する医師。町一番の名医で詩人でもある。


■ウルス(山谷初男)

何万年にもわたり〈心臓の島〉に住む年老いた熊の王。 〈風の民〉の隆盛や〈黄金龍の民〉の侵略と滅亡の歴史を目の当たりにしてきた。


■金鷲(石田太郎)

アモンを導く金色の鷲。 ブラニックに拉致されたアモンに、〈風の民〉としての風を感じ、自由に空を飛ぶことを教える。


■ミリュー

瀕死の状態の時、アモンの〈力〉によって助けられ、それ以来、家族の一員となる。 亡命の際に、ハンベルの郊外に置き去りにされるが…。


■ピーナ

マリアの友達。



■大森一樹(総監督)

1952年大阪市生まれ。京都府立医科大学在学中に16mmで制作した『暗くなるまで待てない』(1975)が話題を呼び、1978年、第3回城戸賞を受賞した自らの脚本を映画化した『オレンジロード急行』で監督デビュー。以後、『ヒポクラテスたち』(1980)『恋する女たち』(1986/日本アカデミー賞優秀脚本賞・優秀監督賞)『シュート!』(1994)『わが心の銀河鉄道〜宮沢賢治物語』(1996/日本アカデミー賞優秀監督賞)などを発表する。また、1989年の『ゴジラVSビオランテ』、1991年の『ゴジラVSキングギドラ』など、『ゴジラ』シリーズの監督・脚本家として世界的にも名声を馳せている。


■篠原俊哉(アニメーション監督)

1959年福岡市北九州生まれ。1983年上智大学理工学部卒業後、「東京ムービー新社」に入社。2年半の制作修行を経て、1986年「あんなぷる」に入社し演出に転向。ディズニーのTV向け映画『ガミーベア』などに携わる。以後『ルパン三世 DEAD or ALIVE』(1996/絵コンテ)『ジャングル大帝』(1997/絵コンテ)などの映画に参加。テレビ「ルパン三世/炎の記憶」の演出に続き、今回この『風を見た少年』で劇場用長編映画を初監督する。


■成島出(脚本)

1961年山梨県生まれ。学生時代に制作した『みどりの女』で「PFF1986」に入選。審査員だった長谷川和彦の誘いで「ディレクターズ・カンパニー」に参加し、相米慎二の『お引っ越し』や中山秀幸の『ザ・中学教師』などの助監督を務める。

脚本家としては『シャブ極道』(1996)、『恋極道』(1997)などの骨太な作品に続いて、今回『風を見た少年』で新たなるジャンルに挑む。



■寺嶋民哉(音楽)

1958年生まれ。高校時代にブラスバンドでトランペットを始めたことがきっかけとなり、吹奏楽や小編成のバンドアンサンブルなどの編曲を手がけるようになる。以後、シンセサイザーを駆使した独特のオーケストレーションで高い評価を受け、映画、テレビ、アニメ、ゲームなど数多くの映像音楽で才能を発揮、近年ではミュージカルの作曲、編曲、舞台音楽などにも活動の場を広げている。主な作品は『緊急呼出し/エマージェンシー・コール』(1995/大森一樹監督)や『学校の怪談2』(1996)『ズッコケ三人組』(1998)などがある。


■REBECCA(主題歌)

1982年、ボーカルのNOKKOを中心にバンド結成。「フレンズ」「RASPBERRY DREAM」などのヒット曲とともに、1980年代のミュージック・シーンを駆け抜けたが、1990年1月の武道館公演を最後に活動を休止、翌1991年には正式な解散を発表した。1999年、テレビドラマ「リップスティック」に「フレンズ」が使われたことで人気が再燃、今回、映画製作陣の熱いラブコールに応えて10年ぶりの再結成が実現した。

◎NOKKO(ボーカル)1963年44月4日生まれ
◎土橋安騎夫(リーダー・キーボード)1960年9月19日生まれ
◎高橋教之(ベース)1959年12月10日生まれ
◎小田原豊(ドラムス)1963年2月6日生まれ
主題歌「神様と仲なおり」6月21日発売(イーストウエスト・ジャパン)



■C・W・ニコル(原作)

1940年7月17日生まれ。英国南ウェールズ生まれ。17才でカナダへ渡り、その後、カナダ水産調査局北極生物研究所の技官として、海洋哺乳類の調査研究にあたる。1967年より2年間、エチオピア帝国政府野生動物保護省の猟区主任管理官に就任。シミエン山岳国立公園を創設し公園長を務める。1972年よりカナダ水産調査局淡水研究所の主任技官、また環境保護局の環境問題緊急対策官として、石油、科学薬品の流出事故などの処理にあたる。1980年、長野県黒姫に居を定め、以降、執筆活動をしている。1995年7月、日本国籍を取得。

1991年「開高健賞」選考委員
1993年より(財)屋久島環境文化財団特別顧問
1994年内閣官房「21世紀地球環境懇談会」委員
1997年内閣官房「子供の未来と世界について考える懇談会」委員

著書

「ティキシー」「勇魚」「風を見た少年」「TREE」「FOREST」
「北極カラスの物語」「C・W・ニコルの自然記」
「C・W・ニコルの海洋記」「C・W・ニコルの旅行記」「C・W・ニコル黒姫日記」
「C・W・ニコルの森と海からの手紙」
「C・W・ニコルと21人の男たち」「ザ・ウィスキーキャット」「盟約」

心の扉はいま、無限の世界へと開かれる―

私が初めて「風を見た少年」を書いたのは、1979年のことだ。その頃の私は、後に妻となる女性の献身的な協力を得て、五木寛之氏の小説の英訳に取り組んだり、自分自身の小説(後に「勇魚」として出版された)の取材のために和歌山県の太地で一年を過ごしたり、子どものための英語の「古事記」を作るべく、詩人の谷川雁さんの家がある黒姫に足繁く通うという生活―いわば、日本語との格闘を重ねる日々だった。今にして思えば、あれほど集中して日本語を学んだことが、私の脳に何らかの影響を与えたに違いない。というのも、ある夜、私は空を飛ぶ少年―それも、「風の流れが見える」という能力のおかげで空を飛ぶことのできる少年の夢を見たのだ。

翌朝、目覚めるが早いか、私は夢で見た話を書きとめにかかり、結局それは一日がかりの仕事となった。夢の中では、すべて日本語が使われていたせいで、物語は私の知る、ごく簡単な日本語で紡がれていた。

今、これはどんな作品かと問われれば、私はこう答えるだろう。ファシズムや独裁者、好戦的な軍事政権にノーと訴える、優しさのいっぱい詰まった物語です、と。ちょっとカッコよすぎるかもしれない。元を正せば、偶然の夢から生まれた話なのだから。

だがそれでもなお、私は信じている―。人生には、見えるはずのないものが見える瞬間がある。そのとき、奇跡は生まれるのだ、と。考えてみれば、人が生きる上で一番大切なのは、たやすく確かめることのできないものばかりではないか…。愛、信頼、友情、信仰、希望、勇気、優しさ、知恵、すべてそうだ。だが、それを実感できたとき、私たちの心の扉は無限の世界へと開かれる。

そして、私たちがどんなに年をとろうと、あの少年はいつも心のどこかで、お話を語って聞かせるときをじっと待ち続けているに違いない。

作家の一人として、この私も自分の作品が映画化されることを心から喜んでいる。何よりうれしいのは、それが他でもない、あの夢の少年の物語だということだ。