『宮廷料理人ヴァテール』
11月4日よりBunkamuraル・シネマにて公開

2000年/フランス・イギリス合作/カラー/スコープサイズ/ドルビーSRD/1時間58分/字幕翻訳:古田由紀子 オリジナル・サウンドトラック:ヴァージン・レコード/提供:テレビ東京、博報堂、テレビ大阪、アミューズ、日本ヘラルド/配給:日本ヘラルド

◇監督:ローランド・ジョフィ ◇脚本:ジャンヌ・ラプリュヌ ◇英語脚色:トム・ストッパード ◇音楽:エンニオ・モリコーネ ◇製作総指揮:アラン・ゴールドマン ◇製作:ローランド・ジョフィ ◇撮影:ロベール・フライセ ◇美術:ジャン・ラバス ◇衣装:イヴォンヌ・サシノー・ド・ネール ◇編集:ノエル・ボワソン ◇録音:パーヴェル・ヴドフチャック、フランソワ・グルー、ロラン・カリオ ◇配役:ジェラール・ムレヴリエ(フランス)、カレン・リンジゼイ=スチュアート(イギリス) ◇メイク:ジャンネット・デ・ロッシ ◇ヘアー:ミレッリ・スフォルツァ ◇ライン・プロデューサー:パトリック・ボルデイエ ◇共同製作:ティモシー・バリル

◇キャスト:ジェラール・ドパルデュー、ユマ・サーマン、ティム・ロス、ジュリアン・グラヴァー、ジュリアン・サンズ、ティモシー・スポール、マリー・ラクラン・ヤング、ハウエル・ベネット、リチャード・グリフィス、アリエル・ドンバール、マリーヌ・デルテルム、フィリピーヌ・ルロワ=ボリュー


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【解説】

─国王ルイ14世をもてなす3日間の饗宴─ 主膳者ヴァテール


伝説となった男がいた。その才能と誇り高い生き方が後世まで語り継がれた実在の天才料理人フランソワ・ヴァテール。彼はルイ14世を招いて催された歴史に残る3日3晩の目も眩む大饗宴を芸術家として指揮し、王を感嘆させた。料理史において、ヴァテールはクレーム・シャンティイの考案者、またヴァテール風スープに名を残し、デュマの「三銃士」、日本では澁澤龍彦の「華やかな食物誌」に誇り高き芸術家として賞賛されている。『宮廷料理人ヴァテール』は彼の3日間の饗宴に隠された愛と陰謀と欲望を描いた一大スペクタクル・ドラマだ。フランス映画史上空前の40億円の製作費を投じ、2000年カンヌ国際映画祭オープニング作品として上映され世界を唸らせた。また21世紀初のアカデミー賞受賞を狙い2000年12月に全米での公開も決定した今世紀最後の話題作だ。

今は年老いた英雄コンデ大公は内乱でルイ14世を裏切ったため、王の信頼を取り戻そうと莫大な借金を抱えながらも当時のフランス国家税収入1/140の5万エキュ(因みにこの3日間の費用は現代の日本円に換算すると3兆5714億円に匹敵する)を投入して宴を催す。そして、コンデ大公に宴を任されたヴァテールはシャンティイ城での大饗宴を仕切るが、3日目に自らの信念を貫いて自決した生き様は後世まで賞賛された。この3日間の饗宴に一体何があったのか?ルイ14世をめぐるフランス宮廷を舞台に、饗宴の裏で行われた愛と陰謀と欲望とは?世紀の一大スペクタクル・ドラマ『宮廷料理人ヴァテール』はこの謎を今、解き明かしていく。

物語は1671年4月22日、ルイ14世が隆盛を極めていく頃のフランス。コンデ大公は、国王ルイ14世の信頼を取り戻そうと腐心している。そのために、コンデは大公家の命運をヴァテールの手に委ねることにし、シャンティイにあるコンデ家の城にヴェルサイユ宮の500人を超える廷臣全員を招いて接待するという重責を担わせる。3日3晩を通 しての饗宴、しかもそれは至高のきらびやかな宴でなくてはならないのだ。ヴァテールは国王を魅了し驚嘆・満足してもらおうと、3日間の祝宴にそれぞれテーマをつくった。初日は“太陽の栄光”、2日目は“水の饗宴”、3日目は“氷の饗宴”だ。ヴァテールはテーマ毎に祝祭をデザインし、念入りな究極メニューと国王が夢中になっているバレエ、オペラ、芝居といった大掛かりなショーを準備した。

1日目の夜、ヴァテールを魅了するのが国王妃の女官、アンヌ・ド・モントージエ。アンヌもヴァテールに想いを寄せるが、それはこの華々しい饗宴を司る彼が、平民の出にもかかわらず、何よりも信念と真心の人だったからに他ならない。ところがその夜彼女は国王の夜伽きを命ぜられる。
2日目の宴の素晴らしさに国王はヴァテールを天才だと絶賛し、コンデ公とのゲームでヴァテールを賭けさせ、思い通りにヴェルサイユの宮廷料理人として召し抱えることに成功する。しかし、ヴァテールは忠誠を誓うコンデ大公に我が身を売られたことに深く悲しむ。 さらに、3日目の朝、晩餐の材料となる魚が届かず、完璧な料理を出せないことに絶望し、自らの運命を決意する。
ヴァテールを演じるのは、今やフランスのみならずハリウッドでも活躍する名優ジェラール・ドパルデュー。彼は1989年に演じた『シラノ・ド・ベルジュラック』に通じる役であると語り、誇り高き実在の人物に息吹を吹き込み、彼の代表作といえる作品となった。 ヴァテールに想いを寄せる女官アンヌには今もっとも美しく、演技に磨きがかかったと絶賛される『パルプ・フィクション』(1995)のユマ・サーマン。
王の動向を調べ、我が身の出世を求めながらも、アンヌに言い寄る策略家ローザン侯爵には『海の上のピアニスト』(1998)のティム・ロス。
武将コンデ大公には 『遠い夜明け』(1987)、『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』(1989)等の作品で性格俳優ぶりを示したジュリアン・グラヴァー。
国王ルイ14世は『キリング・フィールド』(1984)『眺めのいい部屋』(1985)『リービング・ラスベガス』(1995)のジュリアン・サンズが好演。

監督、製作は巨匠ローランド・ジョフィ。ジョフィ監督は1984年『キリング・フィールド』でアカデミー賞3部門受賞、そして、『ミッション』(1986)でカンヌ国際映画祭パルム・ドール、並びに技術大賞を受賞。そして、本作以外に『シティ・オブ・ジョイ』(1992)、『スカーレット・レター』(1995)他でプロデューサーとしても活躍している。オリジナル脚本は舞台、テレビの脚本を数多く手掛けるジャンヌ・ラブリュヌ。彼女は本作の脚本の映画化を熱望し、ジョフィ監督によってその念願を達成した。英語脚色にあたったのはトム・ストッパード。彼は『未来世紀ブラジル』(1985)でアカデミー賞脚本賞にノミネート、『恋におちたシェイクスピア』(1998)ではマーク・ノーマンの脚本を見事な台本に仕上げて絶賛され、アカデミー賞脚本賞を受賞した。撮影はアカデミー賞撮影賞にノミネートされた『愛人/ラマン』(1992)、『セブン・イヤーズ・イン・チベット』(1997)のロベール・フライセが担当。
美術のジャン・ラバスは『ロスト・チルドレン』(1995)でのユニークなデザインで、セザール賞美術賞を受賞している。彼は本作で歴史考証に基づきながら独創的でマジカルなセットをシャンティイ城、サン・クルーの庭園などに出現させ、見る者を呆然とさせた。 衣装はイヴォンヌ・サシノー・ド・ネール。ド・ネールは『愛人/ラマン』(1992)等を手掛け、今回の大役で絢爛たる衣装の数々を映画のためにデザインした。衣装の製作はヴィスコンティ作品やスカラ座、最近では『理想の結婚』(1999)などを手掛けた名門の工房ティレッリ・コストゥーミ。音楽は『ミッション』以後4作品でジョフィに提供している巨匠エンニオ・モリコーネがあたり、典雅な雰囲気を盛り上げるために、コーラス、バロック楽器などを多用して絢爛たる世界を作りだしている。当時、宮廷はリュリの時代であったが、より華やかなものとするため、後の世代のラモーを3曲選んだ他、モリコーネもモリエールの「町人貴族」(実際はリュリが作曲し、後の70年に初演)の詩より2曲を書き下ろして、それらをコンデ大公夫人役のアリエル・ドンバールに歌わせている。また、2夜のサン・クルー噴水に設けた特設劇場で上演されるのはヘンデルの有名な組曲「王宮の花火」の序曲に合わせて、カストラートを宙で歌わせたり、今回、発掘されたイタリアの作曲家コロンナの歌劇、アリアなども交えて、正に国王の祝宴を彩 るに相応しいより華やかな世界を音楽で表現して聴き応えあるものにしている。

本作で興味深い料理は歴史考証家マリ=フランス・ノエルにより当時のレシピが再現された。本作の饗宴とヴァテールの死は、招かれていた書簡文化人セヴィニエ夫人の手紙によって後世に伝えられた。主催したコンデ大公は、ルイ14世に反乱するフロンドの乱に関係したため、当時は重要な職から外されていた。国王の信頼を取り戻し、目前のオランダ戦争に自分を売り込むために、ヴェルサイユ宮殿の宴を超えるもてなしが必要だった。歴史に残るこの饗宴はコンデ大公の一世一代の賭けであり、莫大な借金をしても、王を招く歴史的必然性があったのだ。そして、コンデ大公はこの宴の成功によって、1年後のオランダ戦争でフランスを勝利に導いた。『宮廷料理人ヴァテール』は史実に基づきながらも、最高のスタッフ・キャストで作られた一級の人間ドラマである。今まで、"魚が宴に届かなかったので自害した"と伝えられたフランソワ・ヴァテールの料理人としての人生と愛がドラマティックに描かれ、不器用なまでの誇り高き彼の生き方が世界の人々に共感を生むに違いない。



 


【ストーリー】

1671年4月10日。
コンデ大公のもとに、かの“太陽王”ルイ14世の臣下、ローザン侯爵から一通の手紙が届いた。手紙には、コンデ大公が懇願していた、彼の居城シャンティイ城に3日間、国王が訪問することが記されていた。
重職から外されている、年老いた英雄コンデ大公は莫大な借金も厭わず、ヴェルサイユ宮殿の宴を上回る饗宴を主催し、国王の信頼を再び取り戻さなければならない。そして、彼はその大饗宴の運命をひとりの料理人に託すのである。彼の名は、フランソワ・ヴァテール。かつてフランスの財界を影で支配し、ルイ14世との対立により失脚をした元財務長官フーケに使えた、フランスきっての料理人であった。だが、その天才料理人にも準備期間が12日しかない大饗宴は、そう容易いものではなかった…。

饗宴1日目は“大自然の恵み”と“太陽の栄光”。シャンティイ城に国王ルイ14世と共に500人を越す臣下、女官たちが到着した。木と小鳥、蝶々とフルーツと花をテーマに宴が準備される。だが、この豪華な宴を行うため借金がかさむコンデ大公のもとには、前金でないと品物を渡せないという商人たちが大挙する。この問題には「この豪華な宴を成功すれば国王から金が出て返済できる。」とヴァテールが機転を利かせ事態を切り抜ける。鳥かごを抱えて佇む美しい女官アンヌは、突然部屋に入ってきたヴァテールに驚き、鳥かごを落としてしまう。アンヌを驚かせたヴァテールは脅える鳥に、とまり木を差し出した。とまどいながらもその場を立ち去るアンヌと彼女を目で追うヴァテール。



国王の到着後、コンデ公妃がサルに噛まれたり、ヴェルサイユ宮の工事で死んだ息子の母親が国王に直訴してきたり、ヴァテールに次々と問題が生じる。さらに厄介なことに、王弟、オルレアン公が厨房係の少年を自分の小姓に差し出せと要求する。だが、ヴァテールは断固として断ってしまったことで侯爵と取り巻きの人々の反感を買ってしまう。饗宴は始まる。舞台裏ですべてを仕切るヴァテールの姿を見つめていたアンヌは、思わずヴァテールに名を尋ねる。そして、ヴァテールが10年前、フーケが催した晩餐会の料理長だったことを思い出す。ふたりはその何気ない会話で、お互いに心惹かれていった。“太陽の王座”と名づけられた晩餐会では、美しい南国風のエキゾチックな舞台装置が次々と現われ、美しい鳥たちが一斉に羽ばたき、コンデ公妃の華麗なアリアが披露される見事な演出の中、女官アンヌを見つめる3人の男、国王とローザン侯爵、そしてヴァテールがいた。アンヌに心惹かれた国王は早速、その夜の相手に彼女を指名する。国王に寵愛されれば、宮廷でのアンヌの地位は上がって行くことは間違いなかった。アンヌはヴァテールに惹かれながらも、女としての成功を手にするために国王の愛を受け入れる。

饗宴2日目、“水の饗宴”は花火とランプと水の華やかな宴。古代ローマにつくられた“冬の万能薬”と呼ばれる最上の梨を用意し、饗宴を盛り上げていく。一方、幼いアンボワーズ子爵は悪戯で、大公が持病の通風の治療に使う鳥を逃がしてしまう。アンボワーズ子爵を諫めたのはアンヌだった。ヴァテールは自分をかばってくれたアンヌのために、自ら細工した美しい花の菓子に丁寧な礼状を添えて届けた。アンヌは彼の優しさに胸を打たれ、いつまでもその手紙を読んでいた。
厨房に今夜使うランプが届く。だが中身は全て粉々に割れていた。やがて晩餐会の直前に、急に突風が吹き荒れた。部下に指示を出し、奔走するヴァテールの様子を見守っていたアンヌが神に祈りを捧げると、突然、風が止まった。アンヌのヴァテールへの想いが奇跡を起こしたのだ。 最大規模の晩餐会が始まる。噴水を囲む庭園に4000発の花火が太陽のごとく闇夜に打ち上げられ、オペラ歌手が空中をゴンドラに乗ってアリアを歌い上げる。舞台裏ではゴンドラを吊り上げるために馬に綱を引かせていた。しかし、花火の音に脅えた馬たちが暴走し、必死で馬を引き止めた馬役が綱に首を巻かれて命を落とす。事故のことなど何も知らない国王はこの偉大なる饗宴の責任者ヴァテールに賛辞を贈るため彼を呼び寄せるが、饗宴の進行に集中するヴァテールはその招きを大胆にも断わってしまう。その夜、国王たちはコンデを誘い大金を賭けてのゲームに興じる。その時、オランダから使者が戻り、一同はざわめいた。もし、オランダとの戦争が始まれば、優秀な指揮官であるコンデ大公にとって出世のチャンスだが、フランス王女とオランダのオレンジ公ウイリアム3世の政略結婚を選択すれば、彼の出番はない。国王は、書簡を開く前に、最後の賭けをするようコンデ大公に命令する。しかし、大公は莫大な借金を抱え、既に賭けるものは何もなかった。しかし、宴でヴァテールの類まれな才能を目の当たりにした国王は、コンデ大公にヴァテールを賭ける事を提案する。結果 は、案の定、コンデ大公の大敗。大公は大事なヴァテールを失ってしまった。疲れ果てた大公を持病の痛風の痛みが襲う。治療に使うのは生きた鳥の心臓だ。ヴァテールは病に苦しむ大公のために、自分のオウムを差し出した。大公と対面したヴァテールに、もはや自分の臣下でなく、ヴェルサイユの宮廷料理人になったことを大公は冷たく伝える。忠誠を誓って、命を賭けて仕えたコンデ大公から裏切られた驚きをヴァテールは隠すことができなかった。別室では国王と財務長官コルベールの密談が薦められていた。国王は財務長官コルベールの助言を受け入れて、オランダとの戦争を選択するが、コンデ大公を将軍の座から外した。

夜更け。恋する気持ちを抑えることができないアンヌは、遂に彼の部屋を訪れる。そして、ふたりは初めて結ばれる。ヴァテールの傍らで眠るアンヌのもとに、国王が彼女を呼んでいることを召使いが知らせにくる。急いで部屋に戻るアンヌをまるで見張っていたかのようにローザン候爵が待ち構えていた。彼はヴァテールとの関係を秘密にする代わりに、アンヌに肉体関係を要求する。アンヌはヴァテールのためにも、もちろん自分のためにも身を投げ出すしかなかった。
饗宴3日目、金曜日。“氷の饗宴”。ネプチューン、ヘリオス、海の神々から太陽の神に捧げる魚料理。厨房では銀製の皿やゴブレットのぶつかりあう音が響き、朝食の準備が始まっている。そこへ最後の晩餐の食材である魚が到着した。しかし、ヴァテールの目に入ってきた鮮魚はあまりにも少なかった。「これですべてか?」と気が動転するまもなく尋ねるヴァテール。もはやどうすることもできなかった。今日は金曜日、どうしても魚でならなければならない。カトリックの教えの下では金曜日の肉絶ちは絶対である。早朝の時間は刻々と過ぎ、魚は一向に届かない。時は8時を迎え、図らずも既にベルサイユの宮廷料理人となったヴァテールに迎えの使者がくるが、彼は誇り高く拒否する。彼は部屋で最後の食事を済ませたあと、剣を握り自らの心臓を貫くのだった。だが、皮肉にもその直後、大量の魚貝が到着する。人々は、料理の指示を総指揮官に仰ごうと彼を探すが、姿が見当たらない。その時すでにヴァテールの命は尽きていた。アンヌはヴァテールからの一通の手紙を受け取る。泣き崩れるアンヌの手に握られた手紙には、彼のアンヌへの愛が綴られていたのである。アンヌは誇り高いヴァテールの意思を汲み、宮廷から出ることを決意する。

後世に3日間の素晴らしい宴とヴァテールの死を伝えたのは、シャンティイ城の饗宴に同席していた当時の文化人、セヴィニエ夫人の書簡であった。



 


【キャスト&スタッフ】

■ジェラール・ドパルデュー (フランソワ・ヴァテール)

1948年12月27日仏中部の小村シャトルー生まれ。大家族の中で育ち、早くから独立。16歳の時パリに出てTNPのジャン=ロラン・コシェの演劇コースを受講して俳優を志し、1965年にはロジェ・レナールの短編「ビートニクとおしゃれな少年」に主演。その後、仲間とカフェ・テアトルの劇団を結成すると共に、TVやデュラス、ナタリー・サロート、モリエールなどの舞台で活動。1973年ベルトラン・ブリエの衝撃作『バルスーズ』をパトリック・ドヴェール、ミウミウと主演して、スターダムに躍り出、ジャン・ギャバン賞を受賞。以来ブリエ作品はもとより、デュラス、レネ、ピアラ、ベリらの作品に度々出演すると共に、ベルトルッチの大作『1900年』(1976)ではデ・ニーロと共演。また、『仮面』(1975)、フェッレーリの『最後の女』(1976)、ミレールの『Dites-lui que je l'aime』(1977)、『甘くない砂糖』(1979)と、毎年のようにセザール賞候補となる名演を残し、初受賞したトリュフォーの名作『終電車』(1980)で世界にその名を轟かせた。その後も、『ダントン』(1982/モントリオール映画祭男優賞)、『溝の中の月』(1983)、『フォート・サガン』(1984)、『刑事物語』(1985/ヴェネツィア映画祭男優賞)、『悪魔の陽の下に』(1987)、『カミーユ・クローデル』(1988/ロダン役)、『美しすぎて』(1989)と毎年のように同賞の候補となり、『シラノ・ド・ベルジュラック』(1989/カンヌ映画祭男優賞受賞、アカデミー賞候補)で二度目の受賞をした。アメリカ映画デビュ−作『グリーン・カード』(1990)ではゴールデン・グローブを受賞。以来、国際的にも活躍すると共に、リュリに扮した『めぐり逢う朝』(1991)、『1492・コロンブス』(1992)、ルイ14世役のディカプリオと共演した『仮面の男』(1998)と歴史物でも熱演。

近年は名作文学や伝記もののTVミニシリーズを女性監督ジョゼ・ダイヤンと組んで次々と発表しており、『モンテ・クリスト伯』『Balzac』に続いて2000年は『レ・ミゼラブル』のジャン・ヴァルジャンを演じている。なお、女優である前夫人エリザベットとの息子ギヨームと娘ジュリーは俳優として活動。また、1984年にはモリエール作『タルチュフ』で監督に初挑戦し、現在公私共にパートナー、キャロル・ブーケとの共演作『Un pont entre deux rives』(1999)で久々に監督も手掛けて、評判となった。



■ユマ・サーマン (アンヌ・ド・モントージエ)

1970年4月29日マサチューセッツ生まれ。心理学者と大学教授の娘で、マサチューセッツのアムハーストとニューヨークのウッドストックで育った。ニュー・イングランドの予備校に通い、15歳のときにニューヨークのエージェントに見い出され、16歳の時、女優を志し、NYプロフェッショナル・チルドレンズ・スクールに転校した。1987年『ミッドナイト・ガール』(V)で映画デビューし、翌年ビデオ題『ジョニー・ビー・グッド』(V)でアンソニー・マイケル・ホールと共演。テリー・ギリアムのファンタジー『バロン』(1988)での女神ヴィーナスを演じて注目を集めた後、スティーヴン・フリアーズの『危険な関係』(1988)で邪悪なヴァルモン子爵に誘惑される純真な少女セシル・ド・ヴォランジュを演じて絶賛された。続いてフィリップ・カウフマンの『ヘンリー&ジューン』(1989)でヘンリー・ミラーのバイセクシャルの妻を妖艶に演じて一躍評判となり、以後ジョン・ブアマンの『女神たちの季節』、フィル・ジョアノーの『愛という名の疑惑』(1991)、ブルース・ロビンソンの『ジェニファー8』(V/1992)、ロバート・デ・ニーロと共演したジョン・マクノートンの『恋に落ちたら…』(1993)、ガス・ヴァン・サントの『カウガール・ブルース』(1993)と活躍。 1995年はクエンティン・タランティーノの『パルプ・フィクション』でギャングの妻ミア・ヴォレスを演じてアカデミー賞の助演女優賞候補となる一方、ヴァネッサ・レッドグレイヴ共演の『湖畔のひと月』(1995)、テッド・デミの『ビューティフル・ガールズ』(1995)とロマンス映画に出演。以後、『好きと言えなくて』(1996)『バットマン&ロビン/Mr.フリーズの逆襲』(1997)、後の夫イーサン・ホーク共演『ガタカ』(1997)、『レ・ミゼラブル』(1998)『アベンジャーズ』(1998)とバラエティに富んだ作品に主演する。
本作撮影に先立つ1999年春には、NYクラシック・ステージ・カンパニー上演でモリエール作「人間嫌い」の現代的演出で舞台デビューも果たした。なお、ウディ・アレンの『ギター弾きの恋』(2001/公開予定)とジェームズ・アイヴォリー監督、ジェイムズ原作『黄金の盃』映画化でヒロインを演じたのに続いて、クリストファー・ハンプトン監督『The Custom of the Country』(ウォートン原作)に主演。2000年6月にはランコムのイメージ・キャラクターに選ばれた。



■ティム・ロス (ローザン侯爵)

1961年5月14日ロンドン生まれ。彫刻家、画家を志していたが、ジョークのつもりで受けた高校演劇の役を獲得し、演じる事の魅力に取りつかれる。卒業後、ロンドンの芸術学校で演劇を専攻。在学中から、マイク・リーにその才能を認められ、舞台出演を経てゲイリー・オールドマンと共に「Meantime」(1983)でTVデビュー。続いて絶賛されたアラン・クラークのTV映画 「Made in Britain」(1983)の主演で注目され、1984年スティーヴン・フリアーズの『殺し屋たちの挽歌』(V)で映画進出し、イヴニング・スタンダード賞の最優秀新人賞に選出。以来、TVシリーズ「King of the Ghetto」、『ワールド・アパート』(1988)、『コックと泥棒、その妻と愛人』(1989)、舞台でも演じたスティーヴン・バーコフ演出舞台「変身」のTV版、アルトマンの『ゴッホ/謎の生涯』、トム・ストッパードの『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』(1990)とインディ映画での忘れがたい役柄を次々と演じてキャリアを築く。そしてMGMの大作『ロブ・ロイ/ロマンに生きた男』(1995)でスタジオ系作品デビューし、映画史上でも最高の悪役として絶賛され、ゴールデン・グローブとアカデミ−賞の最優秀男優賞にノミネート、英国アカデミー賞を受賞した。また、『レザボアドッグス』(1991)、『パルフ・フィクション』(1994)、『フォー・ルームス』(1995)といったクエンティン・タランティーノとのコラボレーションでも世界的に認知された。他に、「ブロンクス/破滅の銃弾」(1991/V)、『恋愛の法則』(1993)、『マーダー』(1993/V)、 『闇の奥/真・地獄の黙示録』(1993/TV)、『愛に囚われて』(1994)、『リトル・オデッサ』(1994)、『世界中がアイ・ラヴ・ユー』(1996)、『グリッドロック』(1997)、『奴らに深き眠りを』(1997/V)、『Animals』(1997)などがあり、ジュゼッペ・トルナトーレの『海の上のピアニスト』(1998)ではピアノを特訓して大役を見事果たした。1999年はアレキサンダー・スチュアート原作『素肌の涙』で監督デビューし、1999年サンダンス映画祭で初上映されて絶賛された後、数々の映画賞に輝き高い評価を得た。
なお新作に、ジョン・トラボルタ共演、ノーラ・エフロン監督の『Numbers』、ヴェルナー・ヘルツォーク監督の『Invincible』が続き、フィルム・フォー製作、ハロルド・ピンター脚色によるシェイクスピア悲劇『リア王』の映画化で再び監督に挑む。



■ジュリアン・グラヴァー (コンデ大公)

1935年3月27日ロンドン生まれ。RADAで演技を学ぶ。1959年より舞台活動を始め、「どん底」「アントニーとクレオパトラ」「ガス灯」「Sherlock's Last Case」「ヘンリー四世」などに出演。1962年TVにも進出し、1968年からは人気シ4)、ド・ブロカの『彼女はジタン』(1985)、グラニエ=ドフェールの『パリの女教師/追いつめられて』(1986)、アラン・ドパルデュー製作『ジュリアーノ・ジェンマ/シャトル・ブルース』(1987)、モリナロの『エレベーターを降りて左』(1988)とコメディからサスペンスまで幅広く当たる。また、アノーとはアカデミー賞撮影賞候補となった『愛人/ラマン』(1991)に始まり、IMAX作品『愛と勇気の翼』(1995)、『セブン・イヤーズ・イン・チベット』(1997)、新作『Enemy at the Gates』(2000)でコラボレーションを続ける。これによって広く知られるようになり、高い評価を得たTV映画『チカチーロ』(1994)、フランケンハイマーの大ヒット・アクション『RONIN』(1998)、脚本家ダニエル・トムソンの監督デビュー作『ブッシュ・ド・ノエル』(1999)などを手掛け、本作でもダイナミックな映像を見せてくれた。


■イヴォンヌ・サシノー・ド・ネール (衣装)

1937年2月17日サイゴン生まれ。中等教育をパリで受けた後、画家・彫刻家マルセル・ロシュの絵画アカデミーで学び、美術史のディプロマを取得。その後、彫刻家、版画家として創作活動を始める。1979年、ニーナ・コンパネーズの傑作TVミニシリーズ「Les dames de la cote(浜辺の夫人たち)」で衣装デザインを担当して評判となり、ドパルデュー主演『ダントン』(1982)でそのセンスと知識を遺憾なく発揮。プルースト原作の『スワンの恋』で見事な衣装の数々を作り上げセザール衣装賞を受賞し、英アカデミー賞にもノミネートされる。以後『田舎の日曜日』(1984)、シャヒーンの大作『アデュー・ボナパルト』(1985)と『Le sixieme jour』(1987/ダリダ主演)、アポリネール原作『蒼い衝動』(1987)などを手掛ける。また、舞台にも活躍の場を広げ、ピエール・デュクス演出「Les affaires sont les affaires」(1984/ミルボー作)、ミシェル・ブラン演出「L'exces contraire」(1987/サガン作)を始め、モリエール、ラビシュ、アヌイ、フェドーといった作品に取り組む。セザール賞は、『ソフィー・マルソーの愛、革命に生きて』(1988)、史劇 『Lacenaire』(1990)、祖国が舞台の『愛人/ラマン』(1992)で候補となった他、『ヘンリー&ジェーン』(1990)、『カサノヴァ最後の恋』(1992)、コッジオの『La folle journee ou Le mariage de Figaro』(1989)などもデサイン。ここ数年はナタリー・デセイ主演「ラクメ」(1995)、ジュネーヴとヒューストンでの「アラベラ」(1996-1998)、ペトリカ・イヨネスコ演出「真珠採り」(1997/ボルドー)といったオペラで絶賛された。


■エンニオ・モリコーネ(音楽)

1928年10月11日ローマ生まれ。当地のサンタ・チェチーリア音楽院で学び、作曲、トロンボーン、指揮でディプロマを取得。交響曲、室内楽の作曲家として作曲活動を続けながら、舞台劇や、ラジオ、TVのテーマ曲なども手掛けるようになる。1961年ルチャーノ・サルチェの『Il federale (ファシスト)』で映画進出し、1964年セルジョ・レオーネの『荒野の用心棒』(1964)で一躍人気を獲得。以来、レオーネと『夕陽のガンマン』(1965)、『続・夕陽のガンマン』(1965)、『ウエスタン』(1969)、『夕陽のギャングたち』(1970)、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(1984)、パゾリーニと『大きな鳥と小さな鳥』(1966)、『テオレマ』(1968)『デカメロン』(1970)、『カンタベリー物語』(1971)、『アラビアン・ナイツ』(1973)、『ソドムの市』(1975)、ベルトルッチと『革命前夜』(1964)、『パートナー』(1968)、『1900年』(1975)、『ルナ』(1979)、『ある愚か者の悲劇』(1981)で組んだ。トルナトーレ作品では、英国アカデミー賞を受賞した『ニュー・シネマ・パラダイス』(1989)以来全てを手掛け、ドパルデュー主演『記憶の扉』(1996)、1999年ゴールデン・グローブ音楽賞を受賞したティム・ロス主演『海の上のピアニスト』(1998)などを作曲。ジョフィとは『ミッション』(1987)以来、『シャドー・メーカーズ』(1990)、『シティ・オブ・ジョイ』(1993)でパートナーシップを組んでいる。
なお、『天国の日々』(1979)、『ミッション』、『アンタッチャブル』(1988)でアカデミー賞にノミネートされた他、『アルジェの戦い』(1965)、『Mr.レディ Mr.マダム』(1979)、『アタメ』(1989)、『バグジー』(1991)、『ディスクロージャー』(1995)、『シークレット・サービス』(1994)などの話題作を手掛け、この40年間で400近い作品を作曲。最近では、100作のテーマ曲を納めた記念CDもヴァージン・レコードよりリリースされ話題となった。